脳卒中の予防について
2005.01.06 放送より
まだまだ寒さが続いておりますので,今日は寒い季節に起こりやすい重大な病気ということで脳卒中とその予防についてお話しいたします.
そもそも脳卒中というのは正式な病名ではありません.卒中という言葉が,悪い風に当たって突然倒れるという意味で,すなわち脳の血管が破れるか詰まるかして急に意識障害,運動障害,感覚障害,平衡障害,視力障害,言語障害,それに頭痛などをきたすことをいいます.日本人の死亡原因の今でも第2位で,人口10万人当たり年間118人の方が亡くなっており,これは死亡総数の約16%に当たるそうです.そして命を取り留めても麻痺が残り,長期入院(平均在院日数119日)を強いられたり,寝たきりになってしまうことも多い(寝たきり老人の約40%)ようです.
さて予防の話をする前に簡単に脳卒中自体についてお話しいたします.まず脳卒中にどのような病気があるかですが,大きく出血と梗塞に分けられます.そしてさらに出血には高血圧性脳出血とくも膜下出血(これにもさらに動脈瘤によるものと動静脈奇形によるものとがある)が,脳梗塞には脳内の動脈が動脈硬化によって細くなりそこに血栓などが詰まって起こるもの(=脳血栓)と心臓など脳の外からの栓子(血栓,空気,脂肪や腫瘍の塊など)が突然脳内に詰まって起こるもの(=脳塞栓)があります.
これらは神経症状だけでは区別しにくいことが多いのですが,その発症の仕方や経過などで,例えば脳出血や脳塞栓は突然あるいは急に症状が発症するのに対し,脳血栓では進行しては止まりそれを繰り返すなど階段状の増悪がみられたり,比較的ゆっくりと進行してゆくといわれ区別できることもあります.しかし出血では止血,梗塞では血栓を溶かすと治療法が変わりますので,やはりCTやMRIなどで正確に区別することが必要です.
それでは予防についてお話しします.予防の中で最も大切なことは血圧の測定です.高血圧は出血には勿論のこと梗塞にとっても動脈硬化の原因となりますので,自分で血圧を測って高ければ塩分を制限したり適度な運動をして出来れば120/80mmHgくらいにコントロールして下さい.収縮期血圧を10~20mmHg下げると脳卒中の発症を約50%も減らせるそうです.1日に必要な塩分は5~7gくらいが理想ですが,10gを越えないようにしたいものです.ちなみにラーメン1杯には3~5g,醤油小さじ1杯には1gの塩分が含まれているそうです.次はタバコです.
タバコにはリラックスさせる効果もありますが,血圧の上昇,HDL(善玉)コレステロールの低下などにより動脈硬化を引き起こします.心筋梗塞,肺癌,そして近年社会問題化しているCOPDなどいろいろな病気の発症に関係し,正に百害あって一利くらいしかありません.最近では禁煙ガムやパッチなどもありますので,ぜひ禁煙して下さい.それからお酒ですが,これは適量であれば血圧を下げたりHDLコレステロールを上げ,動脈硬化を防ぐ効果があるといわれています.その適量とはビール500ml,ワイングラス2杯(120ml),日本酒1合,焼酎90mlといわれていますが,概してつまみは塩分が多く,またついつい飲み過ぎてしまいがちなので意志を強く持ってほどほどにして下さい.それから勿論,食べ過ぎは要注意です.カロリー摂取の過剰は,肥満,高脂血症,糖尿病を招きます.理想体重(身長×身長×22)をめざして欲しいのですが,単なるカロリー制限ではなく,EPAを含む魚類,食物線維やカリウムを含む野菜や芋類などを含めバランスよく食べて欲しいものです.
また糖尿病の治療では指標の1つであるHbA1cを1%下げると脳卒中の発症率が12%下がるともいわれています.それから高脂血症についてはコレステロールを下げる薬であるスタチン系薬剤がHDLコレステロールを増やすことと臓器保護作用により脳卒中の予防に有用であるともいわれています.
また他の病気としては,心房細動などの不整脈のある方は血栓を防ぐため抗血小板薬や抗凝固薬などをのんでおいた方が良いと思います.その他,生活の上での注意点としてはストレス,過労,睡眠不足,運動不足(適度な運動はHDLコレステロールを上げる)などを避けることも大切です.それから忘れてはいけないことは急激な温度変化により血圧が上がることです.今のこの時期には夜間のトイレや入浴の際の脱衣などで急に体を冷やさないようにして下さい.そして夏場など気温の高い季節には脱水により血液の濃縮が起こりますのでご注意下さい.
以上お話してきましたもののうち高血圧,糖尿病と肥満の4つを併せ持っていることを,死の四重奏と呼んでこれらの因子が1つ加わる毎に危険性が倍になっていくといわれています.皆様,これらがそろうと残念!!どころか切腹ものですからくれぐれもご注意下さいますよう宜しくお願いいたします.
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