イビキと呼吸が止まるという症状にお答えして
2002.06.29 放送より
お葉書ありがとうございます.心配ですね.お葉書の内容を整理いたしますと57歳の男性でイビキがひどく、眠っている時に呼吸がとぎれること、若い時から蓄膿症があり、太っておられることなどをご心配されているように思います.
まずイビキがひどく睡眠中に呼吸がとぎれることがあるというのは、そのお話からまず睡眠時無呼吸症候群であろうと想像されます.睡眠時無呼吸症候群については、以前に1度取り上げましたが、もう1年以上も前のことなので、今日はもう1度簡単にお話しいたします.そもそも無呼吸とは呼吸が10秒以上止まった状態と定義されております.そして1晩に無呼吸がどのくらい起こったかを評価するために、1晩に起こった無呼吸の回数を1晩の総睡眠時間で割ります.すなわち1時間当たりに何回呼吸が止まっているかを示し、これを無呼吸指数といいます.この無呼吸指数が、5以上、すなわち例えば、8時間眠ったとして1晩に40回以上無呼吸が起これば、睡眠時無呼吸症候群と診断されるわけです.この症候群は、特に中年以降の男性に多く、その2~4%にみられると考えられています.そして本症候群は、一般の健常成人の中にも多数に潜在しており、1994年の統計によれば、推定患者数は全国で約200万人といわれております.
そしてその症状ですが、勿論無呼吸があり、これには中枢型、閉塞型、混合型の3種類があります.中枢型というのは脳内の呼吸中枢の活動が停止あるいは活動が上手く伝わらなくなり、呼吸筋の運動が止まってしまう無呼吸の型をいいます.中枢型の無呼吸は、 脊髄小脳変性症など神経変性疾患や脳卒中など器質性脳障害や心不全や不整脈などの循環器疾患などの際にみられることが多いとされています.
次に、閉塞型の無呼吸ですが、これは胸と腹の呼吸運動は保たれますが、鼻腔、咽頭、喉頭といった空気の通り道である上気道の一部に閉塞が起こるため、口や鼻からの換気が停止する無呼吸の型をいいます.閉塞型睡眠時無呼吸を引き起こす疾患としては、鼻中隔弯曲症、鼻アレルギー性鼻炎、それにお葉書の男性がかかられている副鼻腔炎など鼻や副鼻腔の疾患、さらに扁桃肥大などの咽頭疾患そしてこれまたお葉書の男性が気にされている肥満などが知られております.そしてこれらの疾患においては、起きている時からすでに上気道の狭窄を起こす扁桃肥大や舌根沈下などが伴っており、睡眠によりさらに上気道の閉塞が増強することにより無呼吸となると考えられています. さらに、無呼吸の始めは中枢型で、その後、閉塞型に移行する混合型というものもあります.
次に、無呼吸以外の症状では、無呼吸が終わって呼吸が再開した時の強烈ないびきや手足を大きく動かす運動などがみられることがあります.また夜間の無呼吸に伴う睡眠不足に伴う過眠や昼間の傾眠(要するに眠たくてたまらない状態)、朝起きたときの酸素不足に伴う頭痛、1晩中口を開けて呼吸していたことによる口の中の乾燥やのどの痛みなどがあります.このような状態が長年続くことにより、疲れ易さのあまり性格が怒りっぽくなったり無頓着となったり、あるいは記憶力が低下して、仕事や学業に支障を来したり、日中の傾眠による交通事故を起こしたりすることもあります.
この症候群の診断ですが、私の勤務しております伊月病院ではこの疾患をスクリーニングするためにポリメザムという名前の携帯できる装置を使っております.この装置は、口や鼻からの気流を関知するセンサー、イビキを拾うマイク、胸と腹の動きを察知して呼吸をしているかどうかを調べるセンサー、体の向きを調べるセンサー、酸素飽和度を調べるセンサー、心電図のモニターなど脳波以外のすべてを1晩記録できるものです.これは携帯用ですから、つけたままTVを見たり歩いてトイレに行ったりも出来ますので、大体、夜10時から翌朝の6時頃まで8時間つけていただきます.そして翌日解析しますと、実際に呼吸が止まって鼻や口の気流が止まっているか(もしその時胸や腹が動いてなければ中枢性、動いていれば閉塞性の無呼吸と分かります)、呼吸が止まった後に実際に酸素飽和度が下がっているかどうか分かります.
さらにその時の脈拍や体位との関係も分かります.このようにして1時間当たりの無呼吸指数が分かります.正常では5未満ですが、20以上であれば重症でCPAPという鼻につけたマスクから持続的に気道に空気を送り込む装置の適応も出てきます.またそれほど重症でない方は、肥満の解消、蓄膿など鼻の疾患の治療、舌根沈下を防ぐためのマウスピ-スの装着、横を向いて眠ることなどその人その人によってそれぞれ対処法があると思います.
ご相談の方の場合、恐らく睡眠時無呼吸症候群は間違いないと思いますが、治療が必要かどうか1度検査を受けていただいてその程度を調べてみると良いと思います.
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