キアゲハ通信No.098-「α碁(アルファ碁)」
2016.07.14 更新
「α碁(アルファ碁)」
院長 西田 善彦
皆様,少し前に話題になったα碁ってご存じですか?α碁とは,コンピュータの検索などで有名なグーグル社の子会社である英国ディープマインド社が開発した人工知能を持った囲碁対戦システムのことです.このα碁が有名になったのは,今後10年以内には絶対に無理だろうという予想に反して囲碁で無敵の現世界チャンピオンを4勝1敗という圧倒的な強さで下したためです.
コンピュータと人間の戦いは,1997年にIBMのスーパーコンピュータ「ディープブルー」が当時のチェス世界王者を破ったことに始まります.この時には,コンピュータの圧倒的な力を駆使して,可能な次の1手をしらみつぶしに計算する手法によりコンピュータが勝利しました.将棋の時もそうでした.しかし囲碁では,打ち終えるまでの手の数が約10の360乗と桁外れに多いため,通常の計算方法では通用せず,人間の知力の最後の砦と呼ばれていたのです.
さてそれではそれをどう克服したかと言いますと,「ニューラルネットワーク」という人間の脳にも似た情報を直感的に瞬時に判断できる能力を持つシステムを開発し,その判断を可能にするために長時間かけて「機械学習」を行わせたのです.実際にα碁では過去の対戦の3000万手にも及ぶ棋譜を見せてパターンを学習させ,経験を積んだ人間のように直感的に最善あるいはほぼ最善な手を瞬時に選択できるようになったのです.囲碁の世界ではこのような勝負の流れを大まかにつかむことを「大局観」と言うそうですが,コンピュータがそのような知能まで持てるようになったとは正しく驚きです.
ところで私たち医療の世界でも大局観に通ずるような「重症感」という言葉があります.これは医師が診療に際して直感的に患者さんの全体的な状態を把握して下すもので,この感覚は本で読んだ知識だけでは身につかず長年の経験による勘のような直感力が必要です.正しくカンピュータという言葉がふさわしいと思います.
(院内広報誌「なんきんまめ No.125(2016.7.15)」に掲載)
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