キアゲハ通信No.073-「蝶の飼育」
2015.03.09 更新
「蝶の飼育」
院長 西田 善彦
皆様の中で私の趣味の1つが蝶の収集であることをご存じの方も少なくないかと存じます。何しろこのエッセイの題名にもキアゲハと蝶の名前が入っているくらいですから、私は学生時代にはよく蝶の採集旅行に出かけました。しかし今はもう,せいぜい半日で行ける範囲とそのような時間がほとんどなくなりました。それで最近では病院内で密かに蝶を飼育しております。
そもそも蝶は、昆虫の1つですから,人間と違って変態しながら卵、幼虫、蛹を経て成虫(蝶)になります。この蝶のライフサイクル(寿命)は,1年に何回も発生する種類では短くて数週間という短命のものもあれば、高山蝶のように1世代が足かけ3年という長寿命のものもあります。また同じ年1回の発生でも蝶でいられる期間は、蝶で越冬するものは約8ヶ月と長く、蝶以外の卵、幼虫、蛹で越冬するものではわずか2週間しか蝶でいられず実に様々です。そしてそれらは,何を食べて育つかとか、どういう環境で育つかなどによって決まっています。すなわち年に1回しか咲かない花や木の芽を食べている蝶は、植物の生育に合わせて一気に成長する必要がありますし、厳冬をしのぐには必然的に固い殻で守られた卵や蛹が越冬態となっているようです。
このように蝶も知恵を使って精一杯生きているわけですが、人間と違って変態しながら成長するので、見かけは随分と変わっていきます。この変化は,人間から見ると蛹から蝶へと羽化する時が劇的ですが、実際に体の中で起こっている変化は幼虫から蛹になる時だと思います。何と言ってもイモ虫の脚が羽に変わったりするわけで、この時期に人工的に低温処理などを行うと想像も出来ない綺麗な蝶が生まれたりもいたします。
人生における最も重要な転換点は人それぞれに違うでしょうが、鉄は熱いうちに打てということわざにもあるようにその1瞬の時期を逃さず、将来に備えて大きく変わっていきたいものです。
(院内広報誌「なんきんまめNo.100(2012.5.15)」に掲載)
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