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キアゲハ通信No.063-「介護保険について思うこと」

2014.12.24 更新

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「介護保険について思うこと」

院長 西田 善彦

 皆様には介護保険をご利用されている方も多く,ある程度の知識もお有りのことと存じます.今日は私が常々思っている介護保険の問題点について触れてみたいと思います.

 まず始めに介護保険についてですが,これは人口の高齢化と医療費の増大に対して何らかの対策が必要と判断して,国(厚生労働省)が2000年4月に導入した新たな保険制度です.この制度は,高齢化や核家族化の進展などにより増えてゆく要介護者を社会全体で支える画期的なものであり,利用者は自らサービスの種類を選んで利用することができ,さらに保険診療と自費診療の混合が許されない医療保険と違って,「横出し」といってサービスが足りない場合には自費で追加ができるなど,より自由度の高い制度であると言われていました.

 このようにしてスタートした介護保険ではありますが,私の専門の神経難病の分野では,いくつか問題点が見えてきたと思われます.まず始めに介護用品に関しては自由に選ぶことが出来ません.神経難病の方は障害が多種多様なので,それに合わせた介護用品が必要なのですが,品揃えが少なく,かつ患者数も少ないので対応してくれません.また障害者自立支援法よりも介護保険が優先するという理由により,本来なら身体障害者療護施設に入所するのが適当な50歳の方が,介護保険を1度利用したがために自分のご両親よりも高齢な方が多い老健か特養にしか入所出来なくなった悲劇を私は知っています.さらにパーキンソン病のように症状の変動が激しい病気でも訪問調査によってその一瞬だけで機械的に要介護度が判定されており,病状が反映されているとは言い難いと思います.

 私も介護保険は確かに必要な制度であると思いますが,それが医療保険や身体障害者自立支援法などのすべてに優先し,しかも1度でも使えば決して後戻りが出来ない(まるで蟻地獄のようです)という考えだけには賛成できません.

(院内広報誌「なんきんまめ No.90(2010.9.15)」に掲載)
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