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キアゲハ通信No.141-「人たらし」

2023.09.16 更新

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「人たらし」

院長 西田 善彦

 少し前のことになりますが,「ラストマン-全盲の捜査官-」というTVドラマを見ていました.福山雅治さん演じる皆実広見という名前のFBI捜査官が全盲であるにもかかわらず数々の難事件を解決してゆくというストーリーでしたが,いくら何でも全盲ですので彼一人では捜査は無理です.そこを日本の警視庁の刑事たちが最初は彼に反感を覚えながらも次第に彼の人たらし的な魅力に引き込まれていつの間にか強力な協力者となり,最後は自分たちにとって不都合な結末を迎えることになっても彼に従っていったのでした.

 さてここで用いられている「人たらし」とは元来の「人をだます人」という悪い意味ではなく,最近用いられている「人に好かれる人」というほうの意味です.そういう意味では,現在NHKで放送されている朝ドラ「らんまん」の主人公である槙野万太郎も典型的な人たらしと言えるでしょう.槙野万太郎のモデルはご存じの方も多いかと思いますが,高知県が生んだ偉大な植物学者で「日本の植物学の父」と呼ばれている牧野富太郎とされています.牧野富太郎は,1862年生まれで,好きな植物の観察に熱中するあまり小学校を2年で中退という学歴ですが,語学にも精通していて94歳で亡くなるまでの間に生涯で50万点もの標本や観察記録(新種1000種を含む)を残し,『牧野日本植物図鑑』など数多くの著作があります.正しく東京大学の植物学教室の基礎を築いた人だと思います.しかしその一方では,お金には無頓着で家業の造り酒屋から莫大な資産をつぎ込んでもらい家業が傾く原因となったり,奥様にも相当な苦労をかけたようです.それでも多くの人が彼の周りに集まって業績を上げられたのは彼の人たらし的な性格のなせる業だと思います.

 以前にこのコラムで伊月病院を人が集まる病院(患者さんはもちろん職員も)にしたいと書いたことありますが,良い意味での人たらしの病院にしたいと思っています.

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