おしらせ
Announcement

キアゲハ通信No.138-「難病に負けるな」

2023.03.13 更新

t_kiageha1

 

「難病に負けるな」

院長 西田 善彦

 プロ野球選手と難病というとまず初めに思い浮かぶのは,大リーグの伝説的強打者ルー・ゲーリックだと思います.彼は連続試合出場記録中にALS(筋萎縮性側索硬化症)にかかり,記録が途絶えて引退し,そのわずか2年後に亡くなりました.米国では彼の偉業をたたえALSをルー・ゲーリック病と呼んでいます.このほかにも黄色靭帯骨化症という難病は,故・星野仙一監督,元巨人の越智大祐投手,元ソフトバンクの大隣憲司投手,さらに最近では現中日の福敬登投手などが罹患されています.これらの病気は四肢の筋力に直接関係するためスポーツ選手にとって正しく死活問題となります.ところがこのような運動器に関わる難病以外の難病を克服して今年から見事プロ野球選手になった選手が現れました.

 その彼は,田中幹也選手と言って今春亜細亜大学を卒業する身長166cmの小柄な内野手です.ただでさえ体格に恵まれていない彼が,あろうことか3年夏に潰瘍性大腸炎を発症されたのです.潰瘍性大腸炎と言えば,安倍元首相もかかられてこのため総理大臣を1度辞職されこともある大変つらい難病であり,自己免疫的な機序により主に大腸粘膜に慢性の炎症や潰瘍を引き起こし,下痢や血便をきたします.とても野球どころか日常生活にも支障をきたします.そういう状況のもと,彼は一大決心の元,大腸全摘出術という治療法を選んで4年生にはキャプテンとして大学野球に復帰し,1試合で6盗塁というとんでもない韋駄天ぶりや軽快な好守備で忍者と呼ばれるまでになり,さらに昨秋のドラフト会議で選択され中日ドラゴンズ入団を勝ち得たのです.

 大腸は水分の吸収と糞便形成の役目を担っていると考えられ,全摘によりその機能が損なわれるかもしれないと危惧される状況で,プロ野球という激しい運動で水分を我々以上に必要とする仕事において彼がどのような活躍をするのか見ものであり,またぜひとも応援したいと思います.

バックナンバーはこちら


ページの上部へ