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キアゲハ通信No.134-「ゼフィルス」

2022.07.30 更新

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「ゼフィルス」

院長 西田 善彦

 このところウクライナ戦争、コロナ戦争、物価高と暗い話ばかりですので、自分にとって気分が明るくなる話を勝手にしたいと思います。

 皆様、ゼフィルスという言葉はお聞きになったことがないと思います。ゼフィルスとは私の趣味の1つである蝶収集の中でも中核を占める小さなシジミチョウの1群です。ゼフィルスの語源はギリシャ神話の「西風の神、ゼピュロス」であるとされ、体長は約2cmで樹上高くをジェットコースターのように素早く旋回あるいは乱高下しながら飛びます。また発生時期が年に1回だけで6月中旬からの約1ヵ月と限定されており、その飛翔する時間も早朝や夕方であり普通は目につきません。

 ゼフィルスは日本には25種類が棲息しており、徳島にはその内の19種類が記録されています。徳島市の眉山のような低山地にも4種類ほどが見られますが、残りはだいたい森林性であり、特にミズナラやブナなど四国では山奥にしか分布していない樹木を食樹としている種類は野外で見かけること自体がなかなか大変なのです。その代わりオスの蝶の翅表は金緑色やコバルトブルーに輝いており、日光を浴びてそれが輝くさまはまさに生きている宝石と呼ぶにふさわしく、皆様方にぜひお見せしてみたいものです。

 さてそのゼフィルスの中でも一段と人気が高いのはアイノミドリシジミという蝶です。この蝶はオスとメスでは色調がまったく異なっており、オスの翅は金緑色だけですが、メスには4つの型(O、A、B、AB)があります。そして個体数の多い北海道や本州東部ではA型(翅標に黄色い紋が出現)がほとんどであるのに対して、より局地的で個体数も少ない中国・四国・九州では黄色い紋(A紋)に加えて青い帯状の斑紋(B斑)を備えたAB型が主流になります。このため徳島のアイノミドリシジミのメスは全国のコレクターの垂涎の的になっております。今年もこの珍蝶を採集して1年分の診療パワーを充電したいと思っております。

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