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キアゲハ通信No.125-「伊月病院・祝50周年」

2020.12.19 更新

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「伊月病院・祝50周年」

院長 西田 善彦

 まずは50周年おめでとうございます.これもひとえに皆様に支えられてのおかげであり,心より深謝いたします.15歳で小児科を卒業し,そこから思春期を経て50年で老人と呼ばれる世代となりますのでこれはとんでもない年月かと思います.

 また一口に50周年と申しましても,具体的に世の中がどのくらい変化したのか今の生活が当たり前になっていて実感がわきません.そこで具体的に1970年当時のことを思い浮かべてみました.当時私はまだ中学生であり,まさか自分が医師(それも脳神経内科の)になるとは思ってもいませんでした.テレビはさすがにカラーテレビでしたが,16インチで画面の大きさが今の大きさの約1/3,しかし厚さは10倍以上の代物でした.当時はステレオも贅沢品であり,それが普及してレコードがCDにとって換わられたと思ったら,そのCDまでもがスマートフォン(スマホ)などによるネット配信によってすっかり売れにくくなっています.ビデオやパソコンなどの出現も夢のようでしたが,何といっても1番の革命的な驚きは,携帯電話とそれに続くスマホの登場です.従来の電話をどこへでも持ち歩けて辞書やカメラ・ビデオの代わりができ,しかもお金の決済までできるという今ではスマホ抜きの生活など考えられなくなっております.一方,医療の世界ではどうでしょう.私が医師になってから40年余りとなりますが,その当時ですらまだ注射器は使い捨てではなくガラス製のものを繰り返し使っておりました.点滴も大半が瓶入りのものでしたし,各種の薬剤(抗生剤,降圧剤,胃薬など)も種類が限られていました.検査でもCT検査はまだ導入初期であり頭部だけに限定されていましたし,MRIも導入までにまだ5年近く待つ必要がありました.そのほか私は外科的なことは分かりませんが,外科分野でも腹腔鏡やカテーテルを用いた血管内治療など想像以上の革新がなされているように思われます.しかし何といっても医療業界での最大の驚きは,コンピュータと遺伝子工学の導入ではないでしょうか.特に脳神経内科の分野では,まったく原因不明であった難病の原因が次々と究明され,治療法の開発がなされようとおります.具体的には1部の筋ジストロフィーに関しては,原因遺伝子が遺伝子解析により判明し,その病因となっている遺伝子を補うことにより病状の進行を食い止めるところまできております.不治の病の代表であったこの病気に続いて難病中の難病の1つであるALSやこれからの国民病となりえる可能性の高い認知症も必ずや克服できる時代が来るものと思われます.

 かくして世の中は,いろいろな技術の長足の進歩とともにどんどんと変革されてきておりますが,人間はそうは変わることが出来ません.いろいろな道具や手段が利用できいくら利便性が増しても,最終的にはそれを用いるのは我々であります.医療には皆様の命を最後まで責任をもってお預かりするという使命がありますので.創業以来の理念である一期一会の心をもってこれからも日々の診療を続けてゆく所存でございますので,この病院がこれからも永続できますよう皆様のご愛顧を賜れますよう祈念して,わたくしの50周年記念のご挨拶とさせていただきます.

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