キアゲハ通信No.007-「デジタルとアナログ再び」
2014.02.10 更新
「デジタルとアナログ再び」
院長 西田 善彦
20世紀といってもわずか1年10ヶ月前のことですが,なんきんまめ24号に“デジタルとアナログ”と題して原稿を書きました.その内容は,デジタルという新しい技術は余分な情報が一切捨てられているため,情報量が多く味のあるアナログ(従来の技術)の方が良いとアナログを賞賛するものでした.
しかし今回はその言を一部訂正させていただきます.皆様,ルー・ゲーリックを描いた“打撃王”(原題:Pride of Yankees)という映画をご存じでしょうか?もしもご存じなら相当の大リーグ通か筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんのどちらかでしょう.ルー・ゲーリックは米国の野球チーム“ヤンキース”の強打者で連続出場記録を長年持っていた強打者でした.その彼が全盛期の最中に不治の難病であるALSに倒れた悲劇を記録にしたのが“打撃王”という映画です.これは戦前の作品で,そこには有名なベーブ・ルースも本人として出演しているのです.当然本来は白黒映画のはずなのですが,ビデオではカラーの作品になっています.すなわちこのビデオは,コンピュータによって後から総天然色化されたのです.デジタルという技術は乱れやちらつきを無くしデータの劣化を防ぐ代わりに,必要なデータさえも消去してしまうものだと思っていました.しかし,私はこの作品を通じて,デジタルが場合によっては元々無かった情報までも創造してくれることを実感いたしました.
ヴァチャルリアリティ(仮想現実)もまた結構なことだと思います.何しろ居ながらにしていろいろな世界を体験できるのです.たった一度しかない人生を何倍,いや何十倍にも楽しませてくれそうです.21世紀は動くことや話すことができなくなっても決して寝たきりにならず,自分を世界に発信することが出来る素晴らしい世界になるものと思われますので,希望は捨てずにいたいものです.
(院内広報誌「なんきんまめ No.34(2001.4)」に掲載)
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