キアゲハ通信No.010-「天は人の上と下に・・・」
2014.02.17 更新
「天は人の上と下に・・・」
院長 西田 善彦
「天は人の上に人を造らず,人の下に人を造らず」 これは明治の啓蒙家福沢諭吉先生の書かれた著名な「学問のすゝめ」の冒頭の一節です.福沢諭吉先生は,慶応義塾大学の創始者,1万円札の肖像画などで有名ですが,実は21世紀元年である今年は先生のちょうど没後100年に当たります.
「学問のすゝめ」は明治5年に初編が刊行されております.「天は人の上に・・・」は,人間は生まれながらには貴賎上下の差別はないが,学ぶか学ばざるかによって差がついてくるので,勉学に励みなさいという意味だと思います.そして医学,学者,政府の役人,または大なる商売をする町人などは,身分重くして貴き者というように取り上げられています.この当時から100年以上の間(そして一部の医師にとっては現在にいたるまで),医師は患者さんの上に立つものと考えられてきました.確かに患者さんは切羽詰まって病院に来られることもあり立場上どうしても弱いものですが,それにも増して上下関係が存在していたようです.ところが,現在では医療は聖職ではなく純然たるサービス業であり,患者様はご主人様で病院に来られた時点からホテルの客と同じように扱いましょうといわれるようになっております.そこには病院経営上の戦略からの営業的な意味合いが,診療・看護・介護などに多分に影響をおよぼしているように思えてなりません.そこで将来は,患者さんと医療スタッフ(医師と他の医療スタッフの間もまた患者さんに対するチーム医療という意味で対等)の関係は,愛情をもって結ばれた対等の関係になると私は考えています.すなわち,親,兄弟,子供をみる時のようなお互いの損得勘定を度外視した関係(気の置けないそして時として本音で言い合って口論もあるかもしれませんが)で診療してゆきたいと思います.
私は,ネクタイはしません.いつも胸を開いて待っておりますから着飾らないで飛び込んできていただきたいと思います.
(院内広報誌「なんきんまめ No.37(2001.10.25)」に掲載)
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