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キアゲハ通信No.145-「アルツハイマー型認知症に対する新しい治療薬」

2024.05.17 更新

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「アルツハイマー型認知症に対する新しい治療薬」

院長 西田 善彦

 脳神経内科領域では,どんどん新薬が創られています.私が大学を卒業して神経内科を志すようになったのは1985年ともう40年近く前とはいえ,その当時,神経内科は「分からない」,「治らない」,「儲からない→これは余計」内科だと揶揄されておりました. それが近年の遺伝子工学や免疫学の進歩によって今後もっとも治療法が進んでゆく内科になるだろうと期待されています.

 さて新しい薬としては,大きく分けて1.遺伝病などで遺伝子を改変して疾患を根本的に修飾してしまう薬すなわち発症を未然に阻止したり進行を止められる薬,2.モノクローナル抗体薬などにより疾患の発症や再発などをピンポイントで抑制する薬,3.代替医療などへの応用が期待されているiPS細胞を用いた治療などがあります.そして今回のアルツハイマー型認知症に対する新薬は,このうちのモノクローナル抗体による治療薬であります.

 そもそもアルツハイマー型認知症は1906年にアルツハイマー医師によって記載され,記憶障害を始めとし全般的な認知機能が進行性に障害される神経変性疾患であります.認知症の約50-60%を占め,剖検の結果,老人斑と神経原線維変化という病理変化が認められる脳の疾患です.そしてこの老人斑の構成成分がアミロイドβ(ベータ)(Aβ)蛋白であり,病因としてアミロイド仮説が唱えられています.今回の新薬はその仮説にのっとり,Aβ蛋白のうちいったん凝集すると強固に固まって排出できなくなるAβ42をプロトフィブリルという凝集の起こり始めた時期にこれに対するモノクローナル抗体により取り去ろうというものです.

 今回の新薬はレカネマブといい,レケンビという名前で2023年12月20日に発売されました.2週間ごとに1回1時間かけて点滴し年間298万円の費用が掛かるということで誰でもが受けられるという治療ではなさそうですが,その効果は大いに期待されております.

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