キアゲハ通信No.103-「木を見て森を見ず」
2017.05.17 更新
「木を見て森を見ず」
院長 西田 善彦
伊月病院は,経営品質に関するMB賞のAクラスを昨年受賞し,さらにその上のSクラスに認証されたいと考えています.Sクラスを受賞している病院は全国でもまだ10にも満たず,病院の機能評価などよりもハードルが高く,その受賞のために職員一同が一丸とならねばなりません.そのため私の思いを全員に伝える必要があり,このキアゲハ通信を毎週水曜日の朝礼で披露することになりました.それで今まで以上にメッセージ性を持たせる必要が出てまいりましたので,今日は診療の基本の1つについてお話しします.
「木を見て森を見ず」と言うことわざがあります.これは英語の「You cannot see the wood for the tree」を和訳したものだそうで,1本1本の木に注意を奪われると森全体が見えなくなるという意味です.少し意味合いは違いますが,よく似た意味の言葉として「大所高所に立って物事を見る」(個々の細部にとらわれない大きな観点から物事を見る),「群盲象を評す」(物事や人物の1部分だけを理解して,すべて理解したと錯覚してしまう)というものもあります.このことを診療に当てはめてみますと,患者さんは1人の人間(すなわち森)であり,身体のいろいろな部分(すなわち木)をみて診療するに当たり,1つの目立つ症状だけに注目せずその他の症状も見落とさないようにすることが大切だということになります.またこのほかにもいろいろな症状を原則として出来るだけ1つの病気で説明できるように考えること,出来るだけありふれた病気で考えてみることなどが診療の原則だと私は思います.
さらに伊月病院では全人的医療を行動指針に掲げていますので,患者さんの全身だけでなく,心情や周囲の環境などにも配慮する必要があり,「森」どころか「山」全体まで見ることとなり,その山はかなり奥深くてアプローチが大変な場合も多いのですが,そこまで出来る診療を目指したいと思います.
(院内広報誌「なんきんまめ No.130(2017.5.15)」に掲載)
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