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キアゲハ通信No.057-「目から鱗」

2014.11.17 更新

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「目から鱗」

院長 西田 善彦

 先日,実家で荷物の整理をしていたら何と私の大学受験の入試問題用紙が出てきました.昭和48年の徳島大学のものです.その黄ばんだ用紙の問題を見てよくこんなものが解けたなと感心しました.数学や物理などは今の日常診療ではまったく使わないのでさっぱり分かりません.むしろ今の仕事には国語や英語の方が必要だと思えます.それなのに医学部は理系の学科であり,入試には数学や理科が重要視されています.実際に臨床医として働いてみて何か矛盾を感じてしまいます.

 それでは,受験では何故,理科や物理が必要なのでしょうか?問題を分析して筋道立てて解決してゆく力は,理科や物理で特に必要とされますし,またデジタル的な答えとなって現れますので点数化しやすいため,重要視されるのだと私は思います.これに対して国語や英語で試される長文読解や作文は,答えがアナログ的な表現になりますので採点者の主観によって評価が異なるでしょうし,また採点しづらいと思います.確かに普段の日常診療でも検査値の解釈を始め診断・治療には理系の論理的な力が必要でしょう.しかし生身の患者さんが相手ですから,最終的には相手の気持ちや立場を推し量った上で如何に分かりやすく説明できるかが大切であると思います.

 私は大学で研究をしながら医師として働いていました.その時は基礎的な実験もしておりましたので,ついつい理論に走って物事を難しく考えておりました.そしてそれを得意としていた節があったのですが,ある時その間違いに気付かされました.それは論文発表の時,恩師の川井先生から「原稿は自分が読み返して見て,もうこれ以上分からないところが無くなるまで直しなさい」と言われました.この1言で目から鱗が落ちました.なるべく簡潔に考えて出来るだけ分かりやすく表現することの大切さを知ったのです.物理より国語の方が得意だった私ですが,今ではそれで良かったと思っています.

(院内広報誌「なんきんまめ No.84(2009.9.15)」に掲載)
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